問題
$l$メートル離れたA君とB君が向かい合って歩き出した。それと同時にA君の愛犬がA君からB君に向かって走り出した。この愛犬はB君のところに来ると折り返してA君の方へ走り、この往復運動をA君とB君が出会うまで行う。この愛犬は何メートル走るだろうか?ただし、A君の速度は毎分$a$メートル、B君の速度は毎分$b$メートル、A君の愛犬の速度は毎分$c$メートルである。また、$0 \lt a \lt c, 0 \lt b \lt c$と仮定する。
この問題を2通りの方法で解く。着目する点が異なれば、解答する際に必要となる知識(技術)が異なる。「解答1」は中学生の知識で解けるが、「解答2」は高校生の無限等比級数の知識が必要となり、また、計算も複雑になる。この2つの解答から「有限時間に埋め込まれた無限回繰返し」とまとめることができる事例である。
解答1
愛犬の動きに惑わされないようにして、まず、A君とB君に着目して解いてみる。A君とB君が出会うまでの時間を求めると、$\frac{l}{a+b}$分となる。この間に愛犬が走る距離は、$\frac{lc}{a+b}$メートル、となる。
解答2
A君から離れた愛犬の動きに着目し、B君に出会うまでに走った時間($t_{1AB}$)、折り返してA君に出会うまでに走った時間($t_{1BA}$)、折り返してB君に出会うまでに走った時間($t_{2AB}$)、・・・を各々求め、それらの和を求める。この和に$c$をかければ答えが出る。
$t_{1AB} = \frac{l}{b+c},$ $t_{1BA} = \frac{l – (a+b) t_{1AB}}{a+c} = \frac{1}{a+c} \frac{l(c-a)}{b+c}$、より $t_{1AB} + t_{1BA} = l \frac{2c}{(a+c)(b+c)}$
$t_{2AB} = \frac{l – (a+b) \left(t_{1AB} + t_{1BA} \right)}{b+c} = \frac{1}{b+c} \frac{l(c-a)(c-b)}{(a+c)(b+c)},$ $t_{2BA} = \frac{l – (a+b) \left(t_{1AB} + t_{1BA} + t_{2AB} \right)}{a+c} = \frac{1}{a+c} \frac{l(c-a)^2(c-b)}{(a+c)(b+c)^2}$、より $t_{2AB}+t_{2BA}= l \frac{2c(c-a)(c-b)}{(a+c)^2(b+c)^2} = \frac{(c-a)(c-b)}{(a+c)(b+c)} \left( t_{1AB} + t_{1BA} \right)$
数列$(t_{nAB}+t_{nBA})_{n=1,2,\ldots}$は初項$l \frac{2c}{(a+c)(b+c)}$、絶対値が$1$未満の公比$\frac{(c-a)(c-b)}{(a+c)(b+c)}$の等比数列でその和は
$l \frac{2c}{(a+c)(b+c)} \frac{1}{1 – \frac{(c-a)(c-b)}{(a+c)(b+c)}} = \frac{l}{a+b}$
となる。従って、この間に愛犬が走る距離は、$\frac{lc}{a+b}$メートル、となる。